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保育園を取巻く問題練馬区立保育園の民間委託 ( 運営業務委託 ) とは……

小泉内閣の「聖域なき構造改革」にはじまった、
地方自治法や児童福祉法などの法改正を伴う改革政策の流れを受け、
練馬区でも「新行政改革プラン」が進められています。

その中のひとつの政策が、公立保育所の運営を株式会社や社会福祉法人、
NPO法人などの民間企業に委託し、コストを削減する計画です。

しかし削減できるコストは、ほとんどが人件費。

すなわち保育士の給与水準を下げることでしか、運営費の削減はできないのが現状です。

もちろん民間保育園でも、質の高い保育を安定的に行っているところはいくつもあります。

公務員の給与水準が、民間企業よりも高い事実もあります。

それでも雇用が安定した公務員保育士たちが、
経験や学習を積み重ね、日本の保育の質を高め、支えていることも確かです。

一見すると厳しい練馬区財政において、
福祉と言えどコスト削減は当然であるかのように思われる区民もいるでしょう。

しかし、区の試算には、委託に伴う費用は含まれておらず、
委託後の人件費の変動などもまったく考慮されていないため、専門家が再試算したところ、
むしろ委託によって多額の経費増となる結果が出ました。

また、練馬区は待機児童解消や保育サービス充実のための
経費を捻出する手段であることも強調しますが、削減された保育園の運営費は一般財源となり、
保育はおろか、福祉に充てられる保証もありません。

つまり、保育園の民間委託による財政効果や福祉サービスの向上 ( メリット ) は、
そのデメリットの大きさと比べれば、ないに等しいものなのです。

では、民間委託のデメリットとは、何でしょうか。

最大の問題は、委託化によって、
多くの在園児とその父母に多大な負担がかけられることにあります。

公務員である現保育士が、委託前年度の3月末日をもって異動となり、
翌日の4月1日から委託事業者の保育士に変わるのです。

長い子で5年間、毎日の成長を支えてくれた先生たちが、ある日突然いなくなります。

子どもたちには全く責任のない、大人の事情で。

「改革の痛み」というには、あまりに大きな不安や悲しみを
小さな子どもたちに押しつける制度だと言わざるを得ません。

父母にとっても過大な不安が伴います。

保育という福祉の恩恵を受けているとはいえ、仕事、育児、家事に追われながら納税し、
年金を払い、多少なりとも社会に貢献している父母が、なぜ安心して働ける環境さえも
脅かされるほど小さき存在として扱われなければならないのでしょう。

一度に21億円もの建設費をかけて「ふるさと文化館」なるハコモノを作り、
10年間で28億円の運営費削減 ( あくまで区の試算によれば。実際は削減できない ) のために、
二千人にも及ぶ子どもたちに不安を強いる改革とは、いったい……。

さらに民間事業者には、倒産や破綻のリスクもあります。

実際に練馬区では三原台温水プールなどの運営を受託していた会社が倒産した例や、
中野区の認証保育所など全国29ヶ所の保育所を運営していた会社が、
ある日突然全園閉鎖した例もあります。

このように区が説明する民間委託の大義名分とは裏腹の現実が見えてきます。

ただし、実際にはメリットがないわけではありません。

区民の視点で見れば、運営コストの削減が本当にできるならば、
ひとつの大きなメリットと言えるかもしれません。

また一時保育の実施が促進されることは、より多くの子育て世帯にメリットがあることです。

そこで、簡単ではありますが、在園児父母の視点で、デメリットとメリットをまとめてみました。

練馬区立保育園 運営業務委託のデメリット

保育士が総入れ替え

慣れ親しんだ保育士の先生たちのほとんどは、正規雇用の公務員。

準備委託の1年間で引き継ぎを行い、
本委託年度の4月には、すべて事業者の保育士に変わります。

子どもたちへの精神的負担は計り知れません。

また、年長組の子どもたち、父母たちにとっては、
1年分の思い出しかない先生方と卒園を迎えることになります。

ベテラン保育士の減少

公務員であるがゆえに、産後や育休後の復職がしやすく、長いキャリアを積み上げられます。

保育士の経験+子育ての経験は、在園児父母にとっても、
保育相談に訪れる地域の子育て父母にとっても心強いものです。

事業者が委託に伴って新たに雇用する若い保育士たちに不安を感じる父母も数多くいます。

倒産リスクを負う

株式会社であれ、社会福祉法人やNPO法人であれ、
公共機関でない事業者になれば、当然、倒産や破綻のリスクは高まります。

現状においては、区の財務視点でのリスク管理は、不十分と言わざるを得ない状態です。

信頼関係が未構築

選定過程で行われるプレゼンによって、初めて知る事業者。

園長候補者とは選定後に初めて顔を合わせます。

1年間の引き継ぎ期間内に事業者と子どもたち、
そして保護者が信頼関係を一から築かなければなりません。

また、事業者は選定されてから保育士の採用をスタートするため、
保育士同士の連携や信頼も不十分である可能性が高くなります。

練馬区立保育園 運営業務委託のメリット

延長保育の時間延長

本来は、延長保育と民間委託は別問題です。

( 公立直営園で父母会が区議会に延長保育実施の陳情をあげ、
実施した園があります [ 関町第三保育園 ] )

ただ、現運営費の中で延長保育の実施や時間延長を行うには、
人件費が安く、時間外労働の制限も少ない事業者の方がやりやすいのが現状。

二重保育を頼まざるを得ない世帯にとっては、一日も早い実施が望まれています。

保育士の異動が少ない

退職者の少ない優良事業者であれば、公務員のような異動はなく、
6年間同じ担任保育士に見てもらえる可能性もあります。

取引先の選択肢が広がる

区立区営保育園では、
たとえば生協のような個人の出資を募って運営している会社と取引することが難しいが、
委託化されれば、仕入れ先が事業者の裁量で選べるため、
おもちゃや食材、消耗品など、よりこだわった調達が行えます。

オプションを増やしやすい

遊具、イベント、教育プログラムなど、保育の新たな取り組みに対し、
区立区営保育園では公平性の観点から、区立60園の同時実施を前提としているため、
なかなか採用できない場合も多い。

しかし委託園では、前例のない取り組みも比較的実施しやすいようです。

利益の一部を積み立てて、大型遊具や高額なおもちゃなどを買うこともできるようになります。

確かにメリット ( 区は委託にあたってのメリットを強調しますが ) もあるでしょう。

しかし、これはあくまでも
「優良事業者が選定され、誠実かつ意欲的に質の高い保育を行った場合」
にしか発生しないメリットです。

毎年多数の退職者がいる、運営費の虚偽記載がある、保育士による虐待がある、
そんな保育事業者が実在する ( 過去の報道より ) だけに、父母の不安は尽きません。

区の管理能力にも疑問が残ります。

やはり、どう考えても保育園の民間委託政策は、リスクの大きすぎる制度です。

民間委託を問題視すると、
「区立保育園に入園できただけでも恵まれているのだから、文句を言うな」
という声が聞かれます。

しかし、本来はすべての子どもが恵まれた環境で育つ権利を持ち、
それを支援するのが行政の責務ではないでしょうか。

恵まれた保育環境にある子どもたちとその父母の苦痛、
保育士の低賃金・長時間労働を強いることが、
待機児童解消や財源確保の最善の手段であるとは、とうてい思えません。

これまで練馬父母連では、委託計画そのものに反対し、
署名、陳情、抗議などの活動を行ってきましたが、
事業の中身 ( 募集要項や選定基準など ) を改善させたことはあっても、
残念ながら委託の推進自体を止めるに至っていません。

また、すでに委託され、民間事業者によって運営されている保育園では、
数年を経て区立区営園と同様の安定的な保育が実施されるようになりました。

委託予定園においても、委託を前向きにとらえ、
計画の中身を検証・改善する活動をしている父母会もあります。

今後、練馬父母連では、第三次計画にははっきり「NO!」を掲げて活動しつつ、
委託園を含む区内保育園どうしの交流・情報交換をサポートしていきたいと考えています。

保育園の民間委託に関するご意見、情報、ご質問などがありましたら、
メールまたはメーリングリストからご連絡ください。

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